*部下×雑渡 女性向け












 乱れた衣服もさることながら、ぐちゃぐちゃに解けた包帯を手にとって元の腕に巻きつける作業に取り掛かった。情事の後の倦怠感でだれている隙を狙い対象が大人しいうちに、それは事務的なくらいの的確さを持って行われる。
「また、かなり解けてしまいましたね」
「・・・誰の所為だ・・・」
「ああ、すいません。単なる感想ですよ」
 しゃがれた声は元々声帯が焼けてしまったことが原因ではない。非道く疲れた様子の雑渡は、包帯を巻かれているのとは反対の手を額に乗せて、その気だるさをさらに演出していた。
 そんな部下の冷たい物言いに、雑渡は前から感じていた違和感を思い起こし、決するように閉じかけていた瞳をうっすらと開かせる。
「お前さぁ・・・本当に私に惚れてるの?」
「はァ?」
「考えてみたらそれっぽいこと言われたことないし、こういう事後でも淡白だし。セックスが気持ちいいのと取り違えているんじゃないかと思って」
 何を言い出すかと思えば、思いもしない上司からの疑いの言葉に部下は大きく息を吐いて、止まっていた手の動きを再開させた。吐いた息と共に、少々の皮肉をぶつける
「まさか、そういう甘言じみたことを求めていたんですか?」
「別に。身体が目的ならはっきりさせて欲しいだけ。こっちも気を使わなくて済むからねぇ」
 その言葉に、少しの間だけ部下は無言で包帯を巻いていたが、ふと、手を止めていきなり雑渡の上に覆いかぶさった。二人の視線がしっかり交わると、部下は触れるだけの口付けを落とす。それから声を潜めて囁いた。
「惚れてますよ。心の底から。どうしようもないくらい、いつも貴方に焦がれている」
 言葉と共に真摯な瞳で真っ直ぐと、雑渡を見下ろす。対する一つ目は、ニ三瞬いて不思議なものでも見るかのように見つめ返している。
 しばらく二人は会話も無く見詰め合っていた。その何ともいえない間に耐え切れなくなったのは若い部下のほう。真剣だった表情が徐々に下方から赤くなっていく。
「・・・・・・あ〜〜っもう!!!」
 声を上げると弾ける様に雑渡から身体を離し、部屋の片隅で顔を覆いながら俯いた。
「何なんですか!?この羞恥プレイ!!もうなんかリアクションしてくださいよ!!!本当に!!!」
「ごめん。いやぁ、なんかびっくりしちゃって」
 包帯を巻きかけたのが再び解けた手で頭を掻きながら、飄々としている雑渡に部下は「白々しい」と睨んでやったが、赤くなった顔はもうどうすることも出来なかった。
「確信犯のくせに・・・」
「え?そうなの?」










頼むから黙って、

ただ愛させてくれ



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