*土井+タソガレドキ部下+雑渡 自分の実力ぐらい、自覚しているつもりだった。 出すぎたマネはしないし、どちらかと言えば謙虚な方だと思っている。それ故に、多少思いっきりには欠けているが、仕事に対しては実直だ。そういう面も買われて、自分は今の職にありつけているのだと自負している。 しかし事態は最悪だ。 有体に言えば、何がしたいんだかよく分からない上司の言いつけを守って、忍術学園のあれやこれやを調べていたら、物の見事に捕まってしまったのだ。 当たり前といえば、当たり前である。学園の先生に自分は敵わない、と命令してきた上司自身のお墨付きがあるというのに、あの不愉快な包帯男は部下に無理難題を押し付けたのだ。 (本当に、どうしてくれようか・・・・・・) 遣り場の無い怒りに溜息を吐きそうになったが、ぐっと堪える。第一、そのような余裕な場面ではないのだ。 「お前達にうろつかれると、教育上よろしくないんだ」 不覚にもうつぶせに倒された上に、堂々と背中に学園の教員が腰をかけている間抜けな状況を、なんとか打開しなければならない。上司に見られたら呆れられてしまうだろうか。 「そうは言ってもこっちも仕事なんで。従わないと殺される」 横目で相手を睨みながら、愚痴めいたいい訳を述べると、顔のすぐ目の前に苦無が振り下ろされた。ザクッと音を立てて土を抉るそれは、紛れも無く殺傷能力があることをアピールしている。 「今ここで殺されたって同じだろう?」 いい加減重くなってきた背中の上に居座る教師は笑顔でこちらを見下した。出席簿やセコチョークで戦う姿とはまるで違う、その徒ならぬ雰囲気に圧倒されてしまう。 (こいつ、・・・・・・無茶苦茶恐い・・・・・・) 「なんてな。明日も朝から授業があるんだ。血生臭い先生なんて嫌だろう?」 言いながら苦無を引き抜き、教師は立ち上がる。そんな理由か、と悪態をつきたかったが、小さく息を吐くだけに留めて置いた。 「ごもっとも」 「理解が良くて助かるよ。近頃は聞き分けの悪い子が多くてこまる」 ふぅと一つ息を吐いた教員は、先程の殺気だった表情とは打って変わって、爽やかな教師の顔に戻った。そのギャップに身の毛がよだつ。 「先生も大変っすね」 相手の出方を伺うように、少し皮肉っぽく言ってやると、教員は大したことでもない風に最高の笑顔をこちらに向けた。 「ああ、だから二度目は無いぞぅ」 キラキラとしたスクリーントーンでも見えそうなほどの満面の笑顔を残し、「こうしている間にもは組の連中が心配だ」と訳の分からない独り言を棄て台詞に、教員は風のようにその場を消え去った。うっかり、笑顔に釘付けにされてしまったところを、はっと我に返り、背筋に走る悪寒と共に、粟立つ肌をさすりながら仰向けに倒れて、それはもうあてつけの様に大業に溜息を吐いた。 「今のは本当に殺されるかと思いましたよー。なんなんすかー?あいつ」 そこいらの木々に話しかけると、風の囁きに紛れて、しゃがれた声が答えた。 「土井半助。25歳。出身、その他経歴に関しては一切不明」 「そういうこと聞いてるんじゃないですって。もーどうせ来るんなら自分でやってくださいよ」 「これも立派な忍務だよ。文句言ったら減俸しちゃうよ」 「そんな権限無いくせに」 どこからとも無く現れた事の発端である上司は、腹の立つことを言いながら、こちらに手を差し出した。少し不服だったが、その手を取って立ち上がると、全身包帯まみれの上司は、ふふふ、と不気味に笑い出し、何とも不快な気持ちにさせてくれる。 「何なんですか、いきなり・・・・・・き・・・」 さすがに「気持ち悪いですよ」の一言は飲み込んだ。そんな不自然な言葉の切り方に、気を止めた様子も無く上司は「いや、なあに」と笑うことをやめない。 「お前が死んだら、仇くらいは取ってやるよ」 何だ、この人は。と思った。やはりくっくっと笑っている。どうやら自分の言った事に、自分でウケているようだった。どう考えても、それは自分には笑えない話題であるからにして。失礼を通り越して、何だかどうしようもなく呆れてしまい、「あー・・・」と次に続く言葉を考えながら頭をぽりぽりと掻く。 「どうせなら死なない前提の話をしてもらえませんかねぇ」 怒るべきところそんな風に返したものだから、いよいよ訳の分からない上司は爆笑してしまったのは言うまでも無い。 さっさと帰れよ!!! あとがき。 土井と部下の話だったつもりが、雑渡さんのあまりの存在感に土井なんなの?みたいな話に・・・ えと、土井先生がぷっつん切れたのは一年生の周りをうろつかれたからです。他学年はいいけど、一年生には手を出すなよ?っていう意味のない裏設定。 ちなみにタイトルは土井先生が実はまだそんな遠くまで行ってなくて、うだうだ騒いでる黄昏時コンビ(主に雑渡さんが)にわざわざ戻ってきて叫んでいる。という非常に分かりづらい、あとがき読まねぇとわかんねーみたいな感じになっております。 ここまで長々と読んでくれた貴方に感謝です(*´Д`)b ブラウザバックプリーズ |